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執筆者の写真morinone

【季節つぶやき事典】第28回《小満》

新暦の5月21日から(6月4日まで)入る季節『小満』についてのお話しをしましょう。




《二十四節気》のひとつ小満(しょうまん)は夏の節気、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑、の2番目の節気です。


小満は、万物が次第に成長し天地に満ち始める頃

すなわち、陽気が良くなり初夏の気持ちのいい季節といえるでしょう。


春の気候から少しずつ暑さも感じられるようになり、麦の穂が育ち、田植えの準備が始まります。





秋にまいた麦に穂がつく頃にあたり、その出来具合に「少し満足する」が語源という説や、これからだんだんと満ちてくるという意味で、小と言う字があてがわれ小満となったという説もあります。


この季節には、数日間にわたって梅雨のようなぐずつく空模様が続きます。これは本格的な梅雨になる前の、「走り梅雨」「梅雨の走り」と呼ばれる天候です。


それが明けると陽気が戻りますが、そのあとに本格的な梅雨がやってきます。






小満の《七十二候》は以下です。



・初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ) 5月21日〜5月25日頃


・次候:紅花栄(べにばなさかう) 5月26日〜5月30日頃


・末候:麦秋至(むぎのときいたる) 5月31日〜6月4日頃




ひとつずつ見ていきましょう。





蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)》



卵からかえった蚕が桑の葉を盛んに食べだす頃。


この時期になると、蚕の食欲が旺盛になり、餌の桑の葉をどんどん食べます。


蚕の語源は「飼い蚕(かいこ)」。

何千年もの間、人間に飼われ続けてきた昆虫です。


蚕は「カイコガ」という蛾の幼虫ですが、「お蚕様」と呼ばれるほど、農家にとっては貴重な収入源でした。

そのため、数え方も牛や馬と同じ一頭二頭と数えたそうです。


農作業だけでは食べていけなかった農民が、蚕を飼って絹を紡いでいた様子が描かれていますね。かつては、日本中どこでも桑畑や蚕が見られたそうですよ。

桑の新芽が伸び始める時期に合わせて蚕を孵化させると、昼も夜も音を立ててひたすら食べ続けるのだとか。



やがて蚕がつむいだ繭が、美しい絹糸になります。

蚕のつくった繭から取れた高級繊維の絹は高級着物の材料になるだけでなく、貴重な輸出品目として日本の経済を支えていました。

しかし、戦後になり安くて強く肌触りの良い化学繊維が登場して養蚕業は衰退してしまいました。





《紅花栄(べにばなさかう)》



紅花の花が咲きほこる頃。


この時期になると、紅花が一斉に咲き人々の目を楽しませていました。


日本には中国の呉を経て伝来したもので、「呉の藍(染料)くれのあい」が変化し「紅(くれない)」となり紅花となったそうです。

「紅」はもともと色の名前ではなかったのです。先人たちがどの様に色に名前を付けていったのかを、調べてみるのも面白そうですね。


紅花からは食用の油が採れる他、衣料の染料や口紅、頬紅などの化粧品にもなりました。

紅花の花は黄色ですが、何度も染め重ねて鮮やかな紅色が生まれるのです。



染料にするには咲き始めがよいので、外側の黄色いものからこまめに摘んでいきます。そこから「末摘花(すえつむはな)」とも呼ばれています。

紅花は棘が鋭く、朝露にあたって少しでもやわらかくなっている早朝に摘むのだそうですよ。




《麦秋至(むぎのときいたる)》



麦の穂が実りのときを迎える頃。


麦は冬に種を蒔いて年を越し、この頃から収穫が始まります。

この時期を「麦秋(ばくしゅう/むぎあき)」「麦の秋」といい、初夏の季語になっています。

初夏なのに秋というのは、米の実る秋、実りの季節になぞらえて「実りのとき」という意味だからです。


刈り取りを待つ麦畑は一面黄金色。

麦秋の時期に穂を揺らして吹きわたっていく風を「麦風」あるいは「麦の秋風」といいます。

大麦の「芒(のぎ)」と呼ばれる長いひげのような部分が日を浴びて風にそよぐその光景は、私たちにとっては癒される美しい風景のひとこまかもしれませんが、農家の方にとっては、ほっとするものなのでしょうね。


麦の代表は大麦、小麦。

大麦は麦飯にして食べるほか、麦茶やビールの原料になります。

小麦は小麦粉にしてパンや麺類の原料として利用します。


暮らしに目を向けると、6月1日は衣替えですね。

制服や冬服を夏服へと切り替える日です。



もともとは中国から伝わった宮中行事の「更衣(こうい)」を起源としています。

平安時代はこの日を境に夏装束へと切り替え、江戸時代には武士の衣替えはなんと年に4回になったとか。

明治時代に洋装となり、再び年2回に戻ったそうです。

政府は夏服への切り替えを6月1日に、冬服への切り替えを10月1日と定め、それが今日まで続いているのです。歴史ある暮らしの行事なのだと驚いてしまいますね。


地球温暖化で季節ごとの気温などに変化が生じてきて、服装選びも毎年悩ましい所です。衣替えの時期も検討するなんてことがないよう、季節を失うことのないよう、日々心掛けをしたいものですね。






さて、第1回から28回まで『季節つぶやき事典』として二十四節気や七十二候についてつぶやいてきましたが、二十四節気をつぶやき始めた芒種の季節へと一巡しました。


この『季節つぶやき事典』というタイトルのブログは、今回にて終了となります。


見て下さった方々が少しでも日々の暮らしの中に季節というものを感じて、心に豊かな時間を感じてくださっていたなら、つぶやき続けてきてよかったな、と思います。

ありがとうございました。



さて、終わりがあれば始まりがある!


ということで、次回からは気持ちも新たに、季節の暮らしことごとブログを始めたいと思います!

その名も『ことごと綴り』。


二十四節気の時季に沿った食や身体にまつわるお話、旬の保存食・発酵料理レシピなどもお届けします!


より具体的に「知る」「やってみる」「感じる」を実際の暮らしの中に取り入れやすい内容にしたいと思っていますので、是非ご覧くださいませ。


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