4月になりましたね。
今月のことごと綴りをお届けします。
“伝統を受け継ぐ”というとなんとなく重たい心持ちになりますが、暮らしの中で人から人へ自然と繋いできたというものも少なくありません。
先人たちの祈りや願いや暮らしの中の工夫、そして楽しみがそこにはあります。
これからの時間の流れの中にも、それらが無理なく続き、人の営みに彩りを添えてくれたらと思います。
4月 【和風月名 卯月】
この季節を迎えると、外を歩く時に様々な春を見つけ、見上げてみたり、うずくまってみたりと、自然の変化を楽しまれる方も多いのではないでしょうか。
様々なもの、ことが動きだしますね。
桜前線が日本列島を南から北へと駆け抜け、彩りと共に、気分をも温めてくれます。
彩り、香り、気温、鳥の鳴き声、昆虫の羽ばたきなど、日常の時間の中に五感で感じることが増えてくる季節でもあるのではないでしょうか。
小さな変化も思う存分感じて、心豊かな時間を堪能しましょう。
<4月のならわし>
・4上旬~5月上旬頃
花見
・4月5日
清明(せいめい)~二十四節気
・4月8日
花まつり・灌仏会(かんぶつえ)
・4月20日
穀雨(こくう)~二十四節気
・4月上旬~7月上旬頃
御田植祭(おたうえさい)
※それぞれのならわしの詳細はこちらをご覧ください。
<旬の野菜>
新じゃがいも・筍・キャベツ・アスパラガス
<旬の魚貝>
飛魚・ウニ・真鯛・アイナメ桜鯛・イカナゴ・桜えび・浅蜊
<旬の果物>
日向夏・キウイ・グレープフルーツ
<季節の草花>
桜・木蓮・山吹・木瓜の花・牡丹・連翹(レンギョウ)・蓮華草・月桂樹・満天星(どうだんつつじ)・花水木・小手毬
今月の旬の食材
『日向夏(ひゅうがなつ)』
宮崎県が全国生産量の約8割を占めており、生産量日本一を誇ります。
なぜなら、日向夏は宮崎県で発見された柑橘で、明治20年に「日向夏」と命名され、県の特産柑橘になりました。
江戸時代1820年頃に宮崎市の真方安太郎氏の庭で発見された柚子の突然変異種と考えられています。
保温用の袋がけを施すなど冬季の寒害防止栽培方法の進歩で安定供給が可能になり、発見当時は酸味が強く少し食べにくかったその果実も、品種改良を重ねることで現在のように食べやすい味へと変化しました。
まさに「日本生まれ、日本育ち」。
現在も大切に育てられて、新しい商品開発や改良が試みられているようです。
続いて高知県、静岡県、愛媛県が主な産地です。
高知県では「土佐小夏」、「小夏みかん」として販売され、愛媛県や静岡県では 「ニューサマーオレンジ」という名称でも生産出荷されています。
日向夏は、果実の色・果肉・香り・味、全てが他の柑橘と違い、世界中でも珍しい柑橘といわれているそうです。
なぜなら、食べる方法が一風変わっているから。
他の柑橘類の様に、皮を剥いて果肉だけを食べるのではなく、りんごの皮むきをするように外果皮(黄色い色がついている部分)のみを薄くむいて、普通は剥いてしまうふかふかの白皮(アルベド)と一緒に食べるのです。
白皮にほんのり甘みがあり、爽やかな酸味のある果肉を一緒に食べることで酸味がマイルドになり、他の柑橘にはない独特の風味が楽しめます。
味わいはグレープフルーツより酸味が少なく、薄味でさっぱりしているのが特徴です。
外果皮にもえぐみがないので、皮を使ってマーマレードなどのジャムにするとおいしく頂けます。
さわやかな香りを生かした果実酒などもおすすめです。
ビタミンやミネラルなどの栄養素をバランス良く含み、白皮(アルベド)と果肉を一緒に食べることで食物繊維も摂ることができます。
日向夏は温州みかんを一回り大きくしたくらいの大きさで、200~250g程度です。
色は明るい黄色で外果皮はなめらか。
形はブンタンを小さくしたような感じです。
露地栽培のものには種がありますが、ハウス栽培されているものは「種なし」や「種が少ない」ものなので、ギフトとして贈られることも多いようです。
露地物は風雨にさらされて成長するため表皮に細かい傷がつきやすいですが、それは自然の環境で育った証です。
シーズンのピークは4月~5月。
(ハウスものは1~2月頃)
日向夏は、4月半ばからに花をつけますが、1つの株では結実しにくい果物です。
受粉を要するので、その受粉のために畑脇には黄金柑などの他の柑橘が植えられ、生産者の方は別の木から花粉を採り、ひとつひとつの花に手作業で受粉させていきます。
そして実となった日向夏は袋かけをされて、木に成ったまま越冬することで、酸味が抜けて食べ頃となり、翌年の5月頃に出荷されます。
つまり、花が咲いてから収穫するまで1年以上かかるということなのです。
そして、出荷と共に、また来年の日向夏のための受粉作業が始まる訳ですね!?
宮崎県のJA綾町では生産者の方々が一丸となって日向夏の生産をされているそうです。
ハウスでは種なし、種の少ない日向夏、露地で早生、在来日向夏を栽培し、出荷できる期間を延ばしたり、食べやすく改良をされたりしています。
どれも除草剤を一切使用しない独自の栽培方法を実践されているそうですよ。
2020年3月からは、日向夏発見200年を記念した特設サイトが開設されていて、県をあげて日向夏を大切にしている様子がよくわかりますね。
季節の保存食
『日向夏のスパイスマーマレード』
今回ご紹介をする季節の保存食は、旬の食材「日向夏」を使った「日向夏のスパイスマーマレード」です。
柚子に似たさわやかな香りで、酸味が少なくさっぱりした甘さの日向夏。
白いワタの部分は苦みがほとんどなく、ほんのり甘みがあるので、取り除かずにマーマレードにできます。
今回は、宮崎県日南市の『谷口果樹園』さんで丁寧に育てられた無農薬の日向夏を使いました。
澄んだ空気に包まれた山の上の畑で育った『谷口果樹園』さんの日向夏は、香り高く、瑞々しくてとっても美味しいのです。
さわやかな酸味をいかして甘さ控えめにし、クローブ、カルダモン、シナモン、ブラックペッパー、生姜などを加えて、ほんのり甘酸っぱい中にスパイスの香りとアクセントがきいた、スパイスマーマレードにしました。
パンに塗ったり、ヨーグルトに加えたり、お菓子に使ったりするのはもちろん、肉料理やチーズなどとも相性がいいので、お料理にも幅広く使えます。
旬の時期に、日向夏のいい香りに包まれながら、ぜひスパイスマーマレードを作ってみてくださいね♪
【材料】できあがり量 約300ml (保存びん150ml×2本)
・日向夏:5個(650〜700くらい)
(皮を使うので無農薬のものがよいです)
・てんさい糖:果肉+果汁+皮の総重量の40〜60%
(お好みの砂糖でも。量は甘さをみて調整してください)
・水:2cup(400g)
・レモン汁:大さじ1
・クローブ:5粒
・カルダモン:3粒
・シナモン:7〜8cmくらい1本
・ブラックペッパー(ホール):2粒
・生姜(すりおろし):大さじ1
・日向夏の輪切り(飾り用):適宜
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【つくり方】
①日向夏はよく洗って、たて4等分にカットして皮をむきます。
ヘタを取り除き、皮は白いワタごと細めの千切りにします。
果肉は薄皮をむいて種を取り除き(種は使うのでとっておきます)、果汁も一緒にしておきます。
ここで、果肉+果汁と皮の重さを計って総重量を出し、てんさい糖の重さを計算して計量しておきます。
*日向夏の白いワタは苦味が少なく甘みがあるのでそのまま使いますが、他の柑橘類の白いワタは苦味が強いので、包丁でこそいでできるだけ取り除いてください。
②叩いて割ったカルダモン、クローブ、シナモン、ブラックペッパー、日向夏の種を、お茶パックに一緒に入れておきます。
*スパイスと種は最後に取り出しますので、取り出しやすいようにお茶パックにまとめて入れておきます。
*種にはペクチンが多く含まれていて、マーマレードのとろみになります。
③皮を下茹でします。
鍋に①の皮とたっぷりの水(分量外)を入れ、一煮立ちさせます。
ザルにあげて水にさらし、再度ザルにあげて水気をきります。
*下茹ですると皮の苦みが和らぎます。皮の苦みが強い柑橘類の場合は、この作業を2〜3回ほど繰り返すとよいです。
④鍋に、③の下茹でした皮、①の果肉と果汁、てんさい糖の半量を入れて混ぜ合わせ、てんさい糖が溶けて全体になじむまで10分ほど置きます。
*砂糖を早くから加えると皮が柔らかくなりにくいので、砂糖は2回に分けて加えます。
⑤水、②のスパイスと種のパック、すりおろし生姜を加え、中火にかけます。
煮立ってきたら火を弱め、アクを取り除きながら15〜20分煮ます。
⑥残りのてんさい糖を加えて混ぜ、弱火でコトコト15〜20分ほど煮詰めていきます。
焦がさないように時々鍋底から混ぜながら、皮が柔らかくなって好みのとろみ具合になるまで煮ます。
*冷めるとペクチンが固まり濃度がつくため、やや緩めのとろみ加減で火を止めます。
⑦スパイスと種のパックを取り出し、熱いうちに、煮沸消毒などした清潔な保存びんの口いっぱいまで詰めてフタをし密封します。冷めたら冷蔵保存します。
できあがり♪
〈メモ〉
*他の柑橘類(オレンジ、夏みかん、グレープフルーツ、ダイダイ、みかん、レモン、柚子、ライム、金柑など)でも同じようにつくれます。他の柑橘類を使う場合は、白いワタは苦味が強いので取り除いてください。また、皮の下茹で作業を2〜3回ほど繰り返すと苦味が和らぎます。
*砂糖の量(果肉+果汁+皮の総重量の40〜60%)は、お好みで調整してください。今回は甘さ控えめの40%でつくりました。40%より少ないと保存性が低くなります。
*小さめのびんに小分けして密封保存すると、保存しやすく、使いやすいのでおすすめです。
*できたマーマレードを、熱いうちに清潔なスプーンなどで口いっぱいまで入れます。すぐにフタをしてきっちり閉めると保存性が高まります。
*冷めた後、煮詰め過ぎて仕上がりが固くなってしまった場合は、鍋に戻して水か果汁を足して煮直して固さ調節してください。
〈食べ頃〉
できあがってすぐに食べられます。
〈保存〉
冷蔵庫で3ヶ月間ほどが保存の目安です。開封したら、なるべく美味しいうちに早めに食べ切りましょう。
すぐに使わない場合やたくさんつくった場合などは、冷凍保存も可能です。
なるべく平たくして空気を抜いて密閉袋に入れてから冷凍します。 冷凍で6ヶ月間ほどが保存の目安です。
保存びんは、冷凍すると中身が膨張して割れる可能性があるので、保存びんのまま冷凍するのはNGです。
〈アレンジメニュー〉
・バターを塗ったトースト、クリームチーズを塗ったバケット、チーズや生ハムをのせたパン、フレンチトーストの上にさらにマーマレードをのせるのがおすすめです。
・トッピングいろいろ
ヨーグルト、アイス、チーズ、クラッカー、お菓子、焼き芋、もちなどに。
・スパイスマーマレードドリンクいろいろ
お湯に溶かしてホットスパイスマーマレード、炭酸に溶かしてスパイスマーマレードスカッシュ、冷やした豆乳や牛乳に加えてトロッとしたスパイスマーマレードラッシーなど。
紅茶に加えるのは定番ですが、コーヒーやココアに加えても合います。日本酒に入れる人も。
・キャロットラペ、生ハムサラダ、サーモンマーマレードマリネ、浅漬けの隠し味にも。
・野菜のマーマレード煮(にんじん、さつまいも、じゃがいもといんげん、かぼちゃ、れんこん、きのこなど)
・肉料理いろいろ。
柑橘類は肉をやわらかくする働きがあり、マーマレードは肉との味の相性も良いので、肉料理の下ごしらえやソースによく使われます。(鶏もも肉・鶏手羽元・鶏むね肉・豚 牛肉・スペアリブなど)
マーマレード焼き、マーマレード煮、照り焼き、生姜焼き、マーマレード炒め、牛丼、豚丼、唐揚げ、チャーシュー、油淋鶏、ナゲット、マーマレード和え、煮込み、オーブングリル、
・調味料いろいろ
ドレッシング、焼肉のたれ、すき焼きのたれ、味噌だれ、マーマレードソースなど。
・マーマレードのお菓子いろいろ
パウンドケーキ、マフィン、ロールケーキ、シフォンケーキ、チーズケーキ、パンケーキ、マドレーヌ、プリン、チーズムース、ババロア、ゼリー、アイス、ヨーグルトケーキ、コンポート、クッキー、スイートポテト、パイ、ガトーショコラ、タルト、チョコレートなどなど。
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